同業の掛け持ち

私は必要な収入を確保するため、常に副業を行う生活が当たり前になっています。数年前、レストランのウェイトレスを副業(掛け持ち)でやっていました。

その時は本当の本業の職探しをしていたのですが見つからず、1つ目のレストランが実質的な本業でした。そのお店で責任ある仕事を経験したり、仕事の声をかけてもらったり保証人になってもらえるような人脈が作れないかと考えていたところでした。しかしそこは家族経営がウリの小さなレストランで、家族以外は「完全な使用人」という方針で責任ある仕事は一切任されず、お客様(つまり収入)が少ない曜日しか入れてもらえず、お客様とのコミュニケーションは家族従業員が全てやるから間を往復して正確にオーダーを処理するだけで良い」という、お金以外は全く先に繋がらない仕事だったのでそういうものと割り切っていました。

しかしお店の景気が悪くなり、しばしば「今日はもう帰っていいよ」と時間を短縮されたりと収入がますます安定しなくなったので、同じ町にある別のレストランにたまたま飛び込んだところ副業であると話したにもかかわらず採用となりました。同業者の掛け持ちは基本タブー(ライバル店で働いていることになる)ですし、同業者のオーナー同士は何かとつながりがあるものなのですが、諸般の事情から、そのレストランと本業のお店はつながりがない(互いに連絡を取らない)というのがわかっていたので、周囲の知人に頼み込んで口止めをしました。

しかし小さな町のこと、「知り合いの知り合いはみな知り合い」みたいな小さな世界なので、お客さんに見つかるのは時間の問題でした。副業のレストランでオーダーを取っていたら、「君、あのお店で働いている子じゃない?」とあっさり見つかってしまいましたが、私が「ちょっと事情がありまして・・・あちらのオーナーには言わないでいてもらえますか」と頼んだところ、快く「大丈夫だよ」と言ってもらい、オーナーに話したような人は一人もいなかったと思います。

自分がレストラン接客で経験してみたいと思っていたラッシュアワーのピークが来る週末のシフトでした。本業でも早いペースの作業を求められますが、それはどちらかというと心を機械のように無にして正確に働くことであったのに対して、ここでは機転を常に働かせながら他人にのまれないように動く必要がありました。また本業では家族はおしゃべりもスマホ操作も自由なのに私は一切の私語が禁止されていたのに対して、従業員はみんなフレンドリーで平等でした。また規模も大きくオーナーがやり手だったので、いろんなビジネスのシステムを見ることができたのも良い経験でした。さらに当時本業が3日、副業2日だったのですが、収入がほぼ同じという状態でした。

しかし結局は、本業のオーナーにバレそうになり、いろいろなことを考えた結果辞めざるをえなくなりました。直接問い詰められることはなかったのですが、「他のお店ではこういうのはどうしているのかしら」「うちはこうだから」といった、それまでにはなかった質問や牽制が多くなりました。また「他に仕事があるのなら解雇しても訴えられたり失業保険をせびられることもない、しかし首を切ると後々面倒なので、(私から)『辞めます』と言い出してもらうのがベスト」という考えがあったのでしょう。シフト削除や家族へのシフト変更もあり、そっちを辞めても良いとさえおもうほどでした。しかし本業のレストランは知人に紹介してもらった仕事であり、のちの諸々の付き合うを考えると、下手な辞め方はできない状況だったため、別の理由をつけて副業を半年ほどでやめて別の仕事を探すことになったのです。